おはなし【Bloody Painter(2013)】
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Jeff the killer
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【日本語】 僕は思わず叫びました 、するとその瞬間、そいつは僕の方へ向かってきたんです。ナイフを手に、僕の心臓目がけて。僕は、そいつを殴ったり蹴ったり床に転がったりして、もうとにかく力いっぱい足掻きました。 警察はこの殺人犯の行方を捜索中。この話を聞いて、殺人鬼だと思しき人物を見た方は、最寄りの警察署へ連絡するように、との事である。 ジェフと彼の家族はちょうど新しい住居へと引っ越したばかりだった。彼の父が職場で昇格したので、それならば、より“相応しい”家に引っ越そう、と言う事になったのであった。 次の日。ジェフは朝食を食べ、学校へ行く準備をした。朝食を食べている間、彼はまたあの奇妙な感覚が、今度は昨日より、よりハッキリと、まるで何かに軽く引っ張られるかのような痛みと共に沸き上がってきたような気がしたが、彼は再び無視した。朝食を食べ終え、ジェフとリュウはバス停まで歩いていった。 今度は、よりハッキリと、まるで自身を灼くかのような感覚と共に、それはやってきたのだった。 リュウの、大人しくしていろというサインも無視し、ジェフは立ち上がると、ランディーの方へと歩み寄っていった。 ———そう、彼が言い終えるや否や、ジェフはランディーの鼻を素早く打ち砕いた。驚いたランディーが自身の鼻へと手を伸ばした瞬間をも逃さず、ジェフはその手首を素早く掴むと、ねじ曲げ、骨をバキリと折った。 二人は学校に着いたが、今朝の事は誰にも言う事は出来ず、只一日中じっと座っているだけだった。リュウは、兄がどうやってあの三人を打ち負かす事が出来たのかを考えていたが、ジェフにはそれが一体何だったのか、誰よりも理解していた 。あの、何とも形容し難い、恐ろしい…感情。あの時、焼き付くような「何か」が、彼の中でもっと強くなったのを感じた時…。その「何か」が彼を突き動かしたのだ。だれでもいい。目の前にいる者を痛めつけろ、打ち負かせ、と。 そして、信じ難かったが…彼は、それに対して幸福を感じ得ずにはいられなかった。 「学校はどうだった?」 「すごくよかったよ。」 どことなく不気味な声色で、ジェフはそう答えた。 翌朝、ジェフは、誰かが自室の扉をノックする音を聞いた。扉を開けると誰もいなかったので、リビングへと降りていくと、二人の警官と母が玄関の前に立っていた。マーガレットは鬼の形相でこちらを振り返ると、言った。 「でも母さん、あいつらが最初に僕たちをナイフで脅したんだよ。」 「その事なんだけれども。」一人の警察が言った。「私たちはその三人の子供達と面会したのですが、うち二人からその刺し傷とやらを確認致しました。残りの一人からは、強く殴られ、腹部に出来た痣を。君たちがあの時逃げ去って行く所を目撃したという証言者だっています。さあ、詳しく教えてもらおうか。」 「あ、あの…。僕なんです。僕が、全部やった事なんです。リュウは僕を引き止めようとしてくれたのに、抑えられなかった。だから…」 警察はお互いを見やると、頷いた。 「待ってください!」 そこにいた全員が見上げると、ナイフを持ったリュウが階段に立っていた。警察は銃を取り出すと、彼に狙いを定めた。 「僕なんです。あの悪ガキ達に…あんな事をしたのは。証拠ならここにあります。」彼が袖をまくり上げると、その腕にはまるで喧嘩の後にできたかのような、複数の切り傷と痣があった 。 「ナイフを下ろしなさい。」警察がそういうと、リュウはナイフを床に投げ捨て、両手をあげ警察の方へと歩み寄った。 「リュウ、違うよ、僕だよ!僕がやったんだよ!」ジェフは涙を流しながら警察に弁明した。 「…いいんだよ、兄さん。刑事さん、兄さんは僕のために罪を背負おうとしただけなんです。さぁ、どうぞ。」 「リュウ、僕だと言って!僕がやったんだって言ってよ!三人を怪我させたのは僕なんだってば!」 「ジェフ、お願い。皆リュウがやったって事は分かっているんだから、庇う必要なんて無いのよ。」 「どうしたんだ。ジェフ。」 —————見ていられない。 JDCからリウの便りがないまま、二日が過ぎた。 そしてその週の土曜日の朝、嫌に幸せそうな顔をしたマーガレットが、ジェフを叩き起こした。 その一言で、ジェフはすっかり目が覚めてしまった。 長い、静寂に包まれた。 下に降りると、マーガレットとピーターは派手に着飾っていた。…一体どうして子供の誕生日パーティーなんかにここまで洒落込む必要があるのだろうか。 「そうだなぁジェフ。父さんたちはちょっと派手過ぎかもしれない。でも 「それで良いの?」と二人は驚いたが、マーガレットが時計を見て言った。 「子供達はみんな今、中庭にいるの。ねえジェフくん。ぜひ、会いにいってみてくれないかしら?」 「えっと…ううん。僕はもうこんな事する年じゃないから。」 「だめ?」 帽子を被ると、ジェフは子供達に狙いを定めて銃を撃つフリをしはじめた。こんなのバカバカしい、と初めのうちはそう思っていたジェフであったが、やっている内に楽しくなってしまっていた。良い年してこんな事をやる羽目になるのは腑に落ちなかったが、おかげで初めてここ数日間の事−———リュウの事を忘れる事が出来た。 何か、変な音が聞こえてきた。 次の瞬間、ランディー、トロイ、キースが———−—————−—————あの三人が、スケートボードでフェンスを飛び越えて来た。 「やっほー、ジェフ。…で合ってるよな?」 「もう十分だろう、ボコボコにされたくせに何言ってるんだ。それにお前達は僕の弟をJDC送りにしたじゃないか。」 ランディーの目にはまだ、怒りの情が宿っていた。 そう言い終わるや否や、ランディーはジェフの方へと突っ走ってきた。そして彼を地面に押し倒すと、ランディーはジェフの鼻を殴った。だが、ジェフはランディーの耳を引っ掴み、 彼を地面に組み伏せ、そのまま頭突きを喰らわせた。そしてそのままを突き放すと、二人はお互いよろめきながら立ち上がった。 ナイフを取り出すと、ランディーはそれをジェフの肩に刺した。 「手伝ってやろうか?」 「こいよ!」 「俺はお前の弟をJDC送りにした張本人だぜ。お前はただそこでヘバってろ。弟が死ぬまで牢屋で人生を無駄にするのを待ってるだけの、情けねえ野郎はよ!」 「やっとか−——。さぁ!続きを始めようぜ!」 ———この時、この瞬間。 「やっと…やっと本気になったか!」 彼の中の何かが、ブツリと音を立て、切れた。 ———もう、正常な思考も何もかも…すべて消え失せた。 −——興奮し突進してきたランディーの身体をガシリと掴み、そしてそのまま抱え上げると——−—————−————— 脳天から一気に、彼を地にたたき落とした。 痙攣するランディー。だがそれに構わず彼の髪を掴んで引き上げると、ランディーの心臓に、強力な一撃を喰らわせた。 酸素を求め、口をぱくぱくさせながらもがくランディーを厭わず、ジェフはまるでハンマーを振り下ろすかの如く、身体の穴という穴から血が吹き出るまで、何度も彼を殴打した。 皆の視線は、一斉にジェフに集まっていた。彼の両親、パーティーに遊びに来た子供。そして、トロイとキースさえも、ジェフに銃口を向けている事すら忘れ、彼に釘付けになっていた。そして自分に向けられた銃口に気付いたジェフは、二人を目がけて階段を駆け上がってきた。 ジェフを見るや否や、トロイは彼目がけ素早くナイフを振った。しかし、ジェフはすぐさま後ろに退いてそれを躱すと、トロイの顔にタオル掛けを一直線にぶち込んだ。 太った、巨体の少年が、ガクンと崩れ落ちる。 ぜぇ、ぜぇという呼吸音が部屋に響く。 「何がそんなに可笑しいんだよ?」 「−———何が、面白いかって?」 「自分が何に塗れているのか。…気付いてないお前が、だよ。 」 かちり、という音。 彼に触れた瞬間、ライターはアルコールに反応し、瞬く間に炎がジェフを包んでいった。 ジェフは炎に包まれながら、まるで獣のような叫びを上げてのたうち回った。 散々転がり回り、炎をまとった少年が一人、そのまま地に伏す。 瀕死の彼が見た最後の光景は、母親と、その他大勢の人達が未だ燃え盛る炎を消そうとしている所だった。 −———何も見えない。 「駄目ですよ、まだ起きちゃあ。」 「ああ、ジェフ。身体の具合はどう?」と駆けつけた彼女は尋ねたのだが、ジェフは顔が包帯でぐるぐる巻きにされていたので、答える事はおろか話す事も出来なかった。 マーガレットはジェフを抱きしめ、またね、と言って病室を去っていった。ジェフの顔に巻かれている包帯が解かれる日まで、暫くは彼の元へ家族が皆でお見舞いに来てくれた。そして、ついにその日はやってきた。 「それ」を見た瞬間、マーガレットは悲鳴を上げた。リュウとピーターは「それ」を凝視したまま、動く事が出来なかった。 「−———なんだよ?僕の顔がどうしたんだよ?」ジェフはそう言うと、ベッドから飛び退き、トイレへと駆け込んでいった。 その姿を目にした瞬間、ジェフは理解した。 彼の唇は酷い火傷を負っており、深く、どす黒い赤に染まっていた。そして、これは漂白剤によるものなのだろうか。彼の顔は真っ白に染まっており、髪の色も茶から黒に変色していた。 恐る恐る、自身の顔に手を触れる。 ジェフが鏡と家族、交互に見やると、リュウが口を開いた。 「ジェフ、その…。お、思ったより大丈夫そうだね…」 「...何を言ってるんだ?」 「完璧じゃないか。」 その一言に家族は驚愕し、皆一斉にジェフを見つめた。 「ジェ、ジェフ…。大丈夫?」 「さっきから何言ってるんだよ?こんな——−———こんなに幸せな気分、初めてだよ!ハハハハハハ。ハハハハハハハ!ハーーーーーッ。」 ひとしきり笑った後、吐き出すようにしてジェフは呼吸を整えた。そして鏡越しに自分の顔を眺め、その感触を楽しむように、うっとりと頬を撫でた。 一体どうしてこんな事になってしまったのだろうか。 「あの———私の息子は…大丈夫、なんですよね。…頭、は。」 「ええ、まぁ。ただこれは、大量に鎮痛剤を服用した患者によくある事でして。もしも数週間以内に元通りにならない様でしたら、すぐにまたここへ連れてきてください。精神に異常が無いかチェックを行いますので。」 「ああ、ありがとうございます。」 「わかったよーッ。母さぁん。」 こちらです、とその女性は机においてあるものを指すと、マーガレットはそれを見下ろした。あのパーティーの日、ジェフが着ていたよそ行きの黒いズボン、そして白いパーカー。どれも一点の血の染みもなく、綺麗に修復されてある。ジェフを部屋に招き入れ、服を着させると彼らは自分たちの家へと戻っていった。 その日の夜遅く、マーガレットはバスルームから聞こえる奇妙な音で目が覚めた。———まるでだれかが、泣いているような声が聞こえるのだ。 バスルームを覗くと、そこには信じられない光景が広がっていた。 「——————じ、ジェフ。一体何をしているの?」 ナイフを片手に、ジェフはまるで笑顔でも描くように自分の頬をザクザクと削っていたのだった。 ジェフはゆっくりと母の方へ振り返ると、言った。 「ジェフッ。そ、その目は————!」 「こうするしか無かったんだよ。だってずっと自分の顔を見ていたいのに、瞼が邪魔なんだもん。でも焼いてさえしまえば、もう永遠に閉じる事は無いよね。これでずっと自分の顔を見る事ができるよ…。僕の新しい顔を、ね。……どうかしたの、ママ。」 「僕、綺麗でしょ?」 「え、ええ。綺麗よ。」 「お、お父さんを呼んでくるわね。あ、あなたの素晴らしい顔、見てもらわなくっちゃ。」 マーガレットは寝室に駆け込むと、ピーターを揺り起こした。 ふと、彼女はジェフがドアに立っている事に気がついた。 「嘘、ついたんだ母さん。」 それが、彼らが耳にした最後の言葉だった。 二人の肉が、内臓が、えぐり出されていく。 奇妙な音を聞いて、リュウは飛び起きた。…だが、今は何も聞こえない。 恐る恐る、目を開く。だが、何者かが彼の視界に入ったその瞬間、「そいつ」はリュウの口をガバッと塞いだ。 リュウは「そいつ」の手から逃れようと必死でもがいた。だが、そいつは——————−———−———。 −———ジェフはゆっくりとナイフを掲げると、弟に囁いた。 「さぁ、安心して———眠れ。」 原作者:Sesseur |